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ニュース

大学の国際化促進フォーラム

2024.04.03

令和5年度大学の国際化促進フォーラムSGU総括シンポジウム 開催報告「大学が切り拓く日本社会のネクストステージ~次世代社会を共創するリーダーとしてのグローバル人材の育成をどうデザインしていくか~」

2024年3月5日に、大学の国際化促進フォーラムおよびスーパーグローバル 大学創成支援事業(SGU)の総括シンポジウムとして、「大学が切り拓く日本社会のネクストステージ~次世代社会を共創するリーダーとしてのグローバル人材の育成をどうデザインしていくか~」を開催しました。本シンポジウムには対面・オンラインを合わせておよそ270名が参加。SGU事業の成果や課題を振り返るとともに、今後あるべき「国際化」の在り方をめぐって、教育界や産業界から参加した多様な登壇者が議論を繰り広げました。

開催日時

日時:2024年3月5日(火)13時00分~16時20分

会場:筑波大学 東京キャンパス

登壇者

  • 司会
    山下 範久 氏(立命館大学常務理事、グローバル教養学部教授)

【開会挨拶】

  • 池田 貴城 氏(文部科学省高等教育局長)

【第1部 基調講演】
国際的観点からのSGUの成果と今後の展望について

  • 講師
    Hans de Wit 氏(ボストン・カレッジ名誉教授、 Senior Fellow at the International Association of Universities)
    黒田 一雄 氏(早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授)

【第2部 パネルディスカッション】

  • ファシリテーター
    山口 昌弘 氏(東北大学副学長(教育改革・国際戦略担当))
  • パネリスト
    池田 佳子 氏(関西大学国際部教授)
    栗山 俊之 氏(立命館アジア太平洋大学事務局次長)
    黒田 一雄 氏(早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授)
    末松 和子 氏(東北大学副理事・教授(国際交流担当))
    平子 裕志 氏(ANAホールディングス株式会社取締役副会長、経済同友会日ASEAN委員会委員長)
    正宗 エリザベス 氏(株式会社@アジア・アソシエイツ・ジャパン代表取締役、
    パソナグループ淡路ユースフェデレーション学長、在日オーストラリア大使館元公使)

【第3部 大学の国際化促進フォーラム企画】
JV-Campusの現在と未来 ~大学の国際化促進フォーラムの法人化へ向けた展望~

  • 講師
    大庭 良介 氏(大学の国際化促進フォーラムJV-Campus運営委員会委員長、筑波大学医学医療系准教授)

【閉会挨拶】

  • 池田 潤 氏(筑波大学 副学長)

参加者

約40名(対面)・約230名(オンライン)

開会挨拶

はじめに、池田氏(文部科学省高等教育局長)が開会の挨拶を行い、10年間にわたって実施されてきたSGU事業を通じて大学の様々な取り組みにより国際化が進展してきたことについて触れられました。

また、SGU事業期間中の8年目に発足した大学の国際化促進フォーラムの取り組みについても「創意工夫の下、組織の国際対応力等を強化し、得られた成果を横展開いただいていており、心強く感じる」とし、「自走化後も大学の国際化促進フォーラムの今後に期待する」と述べられました。

さらに、SGUの後継事業である「ソーシャルインパクト創出支援事業」について、自治体・企業等と連携して外国人留学生が日本社会に定着し共生しやすい環境づくりを行う「地域連携型」と、国内大学が海外で教育活動を展開し現地学生との共修による人材育成プログラムを構築する「海外展開型」の2タイプを通じて「国内外での国際共修」をキーとする事業を展開していく説明がなされました。

基調講演

国際的観点からのSGUの成果と今後の展望について

一人目の講演者は、Hans de Wit氏(ボストン・カレッジ名誉教授、Senior Fellow at the International Association of Universities)。「国際化」の在り方に関する研究成果を共有し、それに照らし合わせたSGU事業の成果と課題について報告されました。「国際化」の持つ文脈は、地域や年代によって変化しており、1990年代にグローバル経済・知識社会が拡大するにつれて、政府や自治体にとって重要な課題になり、国際化の意義・目的を明確にする必要があると強調しました。また、国際化を検討する際は「海外留学」に主眼が置かれていますが、実際に留学ができる人数は人口のうちの一部に過ぎず、南北間あるいはエリート・非エリート間で格差があることを指摘。誰も取り残さない国際化をデザインし促進すべきだと提言しました。

また、SGU事業の成果については、①政府と大学の足並みが揃っていること、②地域社会など幅広いステークホルダーに注目していること、③トップ大学以外も参画していること、④バーチャル交流を促進していること、⑤目標の明確な数値化が行われていることを評価。一方で、❶「留学」に重きを置いていること、❷包括性に課題があること、❸留学生の日本定着を阻む障壁があること、❹北米・欧州偏重であることを課題として指摘しました。

国際化を通じた大学改革から、ソーシャルインパクトへ

二人目の講演者の黒田氏(早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授)も、Hans氏と同様に「何のために国際化をするのか」という観点から講演を行われました。戦前・戦間期の「平和のための国際交流」という考え方や、現在の英国・豪州で主流な「経済活性化のための留学生受け入れ」という戦略を紹介し、高等教育の国際化に期待される様々な思いを紹介されました。現代において国際化がもたらすソーシャルインパクトを議論する際は、SDGsが重要な観点になると指摘したうえで、国際化によるソーシャルインパクトは国際社会と地域社会の双方に恵みをもたらすものであってほしいと期待を寄せて講演を締めくくりました。

第二部

第二部は、教育界・産業界から多様なパネリストを招き、(1)グローバル人材をどう捉えるか、(2)国際化による社会とのエンゲージメントをどう進めていくか、という2つのテーマで議論を行いました。

平子氏(ANAホールディングス株式会社取締役副会長、経済同友会日ASEAN委員会委員長)は、Z世代が「均質性を重んじる人事方針」「年功序列」などの日本企業の慣習に強い違和感を覚えており、それとは異なる「個人の強みや特性を発揮して自由に働く」人材をグローバル人材と位置付けているのではと考察。実際に、多様な価値観を持つ人々が同じ目標に向かって切磋琢磨する力を養うため、第49回日本・ASEAN経営者会議で人材育成に関するプラットフォームを提唱したと報告しました。

黒田氏(早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授)は、「グローバル人材に必要な力は『グローバルコンピテンシー』とよく言われる一方で、ユネスコが提唱しているのは『グローバルシチズンシップ(世界市民)』であり、経済問題だけでなく政治的にも世界の諸課題に向き合える人材が必要だ」と提言しました。

一方で、正宗氏(株式会社@アジア・アソシエイツ・ジャパン代表取締役、パソナグループ淡路ユースフェデレーション学長、在日オーストラリア大使館元公使)は、外国人人材を育成したとしても、日本定着には障壁が残るという意見を述べられました。淡路ユースフェデレーションでの実体験を踏まえ、「日本企業における杓子定規的なルール運用によって、スキルを生かせずに日本から離職・流出する外国人人材は少なくない」と指摘。組織に頼らず個人で変革を生む優秀な人材をいかに定着させるかが、日本の課題だと述べました。

同じく外国人留学生の日本定着および就労支援を行う池田氏(関西大学国際部教授)も賛同。「旧来の留学生向け『キャリア教育』は現代の要請に合わない。キャリアを一生涯のものとして捉え、課題発見力や探究力の育成をする取り組みが、企業側にも大学側にも認められつつある」と展望を語りました。

課題発見・解決力の養成が求められる中で、栗山氏(立命館アジア太平洋大学事務局次長)は大学職員の役割を大きく二つ挙げました。一つは、多様な背景を持つ人々が納得しながらルールを守る風土をつくること。もう一つは、異文化間のコンフリクトを、相互理解の場に変えることも職員の役割だと述べます。APUでの実例として、パレスチナ侵攻を機に高まったアラブ諸国出身の学生とイスラエル出身の学生間の緊張を取り上げ、「双方に着地点を探る対話が生まれるよう場を整え、日常生活を学びの場に変えた」と共有しました。

第一部で講演を行ったHans氏は、バーチャルおよびオンライン学修が「留学=渡航」偏重の枠組みを脱し、より包括的な国際化を進めるのに資すると期待をにじませました。さらに池田氏は、「Society 5.0でリーダーシップをとれる人材こそが、グローバル人材。COILではその素質を自然に培える」と続けました。

末松氏(東北大学副理事・教授(国際交流担当))は、「資金の獲得競争が激しくなる中で、国際化が「ソーシャルインパクト」を創出するためには、大学・ステークホルダー同士で協働を深め、それぞれにとって学びがあることがポイント。その観点が、公正な世界にもつながるだろう。」と展望を述べ、第二部が締めくくられました。

【第3部 大学の国際化促進フォーラム企画】
JV-Campusの現在と未来 ~大学の国際化促進フォーラムの法人化へ向けた展望~

第三部は、大庭氏(大学の国際化促進フォーラムJV-Campus運営委員会委員長、筑波大学医学医療系准教授)が務められました。JV-Campusは、現時点で45万PV(55%が海外からのアクセス)を集める、オンライン国際教育プラットフォームです。単なるMOOC(Massive Open Online Course)ではなく、日本の高等教育全体への玄関口でありJV-Campus上で教育者と学習者がつながり、留学などのリアル行動へ変容を促すものであると強調しました。また、企業も巻き込むことで教育業界だけでなく社会全体に成果を展開する狙いも紹介しました。

SGU事業終了後は、2025年4月に立ち上げ予定の一般社団法人の一事業として運営されます。参画企業の選定やJVC独自のデジタルバッジの導入、企業と連携したリクルートインターンの導入など、今後の取り組みが拡大していくことが紹介され講演を終えました。

閉会の挨拶

閉会挨拶を行ったのは、池田氏(筑波大学 副学長)。各講演のポイントを振り返り、「このシンポジウムがさらなる横展開と、自走化への弾みとなり、SGUの成果が高等教育界およびネクストステージに波及するように」と今後に期待を寄せて、シンポジウムの幕を下ろしました。

以下より当日の様子をご覧いただけます。

  • 基調講演

  • パネルディスカッション

  • フォーラム企画

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